蘊蓄・豆知識

フォーマルに使える唯一の八寸帯、本綴れ帯。復活した本綴れ単帯について。

本綴れ(爪掻き綴れ)。
まず、綴れ、という織り方があります。
綴れとは本来、織上がりの生地に
経糸(たていと)が見えない織りの組織のことで
織る時に 緯糸(よこいと)を反幅より長く使って織り込み
(具体的に言いますと 緯糸の杼を通すときに
斜めに飛ばして緯糸の長さを多くします)
筬で打ち込んだ時に余った緯糸が経糸の間で
折りたたまれるように経糸を覆い隠します。
その断面図がジグザグのつづれ折りの山道のようなので
つづれ織り、と呼ばれたものです。
ですから 爪掻綴れでなくても 無地の帯地でも綴れが存在します。

綴れで柄を織る時には
まず 柄の図案を経糸の下に置いて
その図の色彩の色ごとに 色の数だけ縫取杼という
小さな杼を用意します。
普通の織物のように 反物の耳から耳へと
緯糸を通すのではなく
例えば 白地に赤い花の柄でしたら
白糸の杼で赤い花の柄の始る部分まで通し
柄の始まりの分部から赤い花をはめ込むように
赤い糸の縫取杼で織り込みます。


花の部分が終われば まだ白糸で織ります。
柄によっては 一列の緯糸上に何色もの色が使われ
そのたびに縫取杼を持ち替えて織り進む
細かい作業です。
この細かい作業で こまかい柄を織るのに
爪先に刻みを入れて爪でかき寄せるので
爪掻綴れの名があります。

絣のように先に糸を染め分けて柄を織り出すのではなく
糸ごとに違う糸で織られるために
色と色の境目に接点がありません。
この部分に糸が渡らないための隙間ができ
それを「羽釣(はつり)」と呼びます。

本綴れは織る職人さんが糸を作ります。
色の指定はありますが 職人さん各々の感性で色糸を作ります。
その糸はかなり太く、しっかりしているので 本綴れは八寸でしっかり肉厚な地風に織り上がります。
帯の中で 唯一、八寸でもフォーマルに使えるとされています。(柄によります)
それは 正倉院宝物の中にも残された歴史ある織物であり、
手間暇のかかった重厚な織物だからです。

その中で 本綴れの単帯 は昭和30年代まで
夏の正装用の帯として使われていました。
どんなものかと言いますと 生地は透けない本綴れで
長さが袋帯寸法ですが 裏が付いていない「単」なので
二重太鼓でありながら 裏地のない一枚仕立の帯となります。

昭和の中ころまで 盛夏の清掃帯として「つづれ単帯」が普及していましたが
新しく「絽綴れ帯」が開発され、夏の帯として普及し始めたことにより、
単帯の使用頻度が低下して 平成に入るころには全く生産されなくなりました。

生産されなくなった大きな理由として
「つづれ単帯」は特殊な「スカラ仕立」で仕立てるのですが
「絽綴れ」の普及により 「スカラ仕立」を行える職人がいなくなってしまい
生産しても仕立てて完成させることができなくなってしまったのです。
また 単衣の時期の帯として 絽綴れや 絽名古屋帯、絽袋帯などが開発生産されるようになり
綴れ単衣帯の需要も薄れてしまったことも理由になりました。

このスカラ仕立を復活させたのが 本つづれ勝山の勝山氏です。
これが スカラ仕立。

長くなったので スカラ仕立てと本綴れの独特な仕立方は 明日のお話にいたしましょう。

単の袋帯、綴れ単帯が こちら。

帯を保護するために 文庫、と呼ばれる 紗の生地で覆っています。

コーデの画像は色が飛んでしまいましたけど
単衣時期にふさわしい 爽やかな淡いミントグリーン地です。
業平菱を金糸銀糸を使い仕上げた格調高い帯。
留袖まで使えるのですが じざいやには留袖も色留も訪問着すらなかったので
小紋に乗せてしまいました。

爪掻き綴の特徴は?

入院していたパソコンが戻ってきたのですが
何故だか まだ不調でして・・・
自宅から連れて来てるパソコンも だましだまし使っている状態で
更に ipadご昇天。
さてさて・・・

そんな中、爪掻き綴れ到着です。
爪掻き綴れ・・・本綴れ、とも言います。これもま絶滅危惧種です。
ほぼ中国産に押されて 国産は1割程度だと聞いています。
国産の本綴れの風合いはしなやかで締まりがいい。
中国産のは 段ボール紙みたいにガチガチか
逆にふにゃふにゃで締めにくいようです。

本物を触ってその感触を覚えてください。
1つ1つ手織りで その人の癖が出てしまうのも本綴れなので
織った人ごとに微妙に風合いが違います。
また 同じデザインを織っても 色の作り方は織る人に任されているので
出来上がりが微妙に異なるのも面白いです。

その本綴れ、
柄の色ごとに 小さな杼を使って織るのですが
経の色と色の堺には糸が渡らない、という特徴があります。
なので 色の境目には「はつり」と呼ばれる隙間ができるのです。
丁寧は仕事は その「はつり」に糸を掛けて隙間を繋ぐ手間をかけています。

白と緑、 緑と茶の 色と色の経部分に隙間があって そこを所々繋いでいるのが判ります。

また 本綴れは柄が裏表同じです。
ただし糸の処理を裏側でするので 裏には糸が飛び出しています。
万が一、お太鼓を汚してしまって 裏まで汚れが通っていない場合は
裏表を返して 裏に出ている糸を表側に引き出して
今までの裏を表として使うことが出来るのです。
これは 他の織にはない大きな特徴ですね。

他にも 経糸が見えない織り方、とか
いろいろ 綴れの蘊蓄はあるのですが
明日は 日本に一人しかいない、という
「スカラ」仕立について と 今はほとんどない「単帯」についてお話いたします。

どんな柄でも1つづつ織れるのが本綴れなので
こんなのもあります。

明日はお茶会! 16日の黄八丈セミナーから、黄八丈の染について・・・

不安定なお天気が続きますね。
雨が降ると湿度が上がって気持ち悪いですね。
明日は雨も上がるようで 良かったです。
今日はお茶室(というほどのものではないですけど)の準備で
お道具の確認や 会記を先生に書いて頂いたり。
お花も 明日増やしますけど 取りあへず大好きな吾亦紅を用意しました。
毎年 咲くのを楽しみにしている土手が草刈りされてしまった・・・
秋明菊はまだ蕾が硬いし、花入れが小さいのでススキは入らない。
ホトトギスを頂けるようなので ホトトギスともう1つ小さいのを何か、と思っています。
二十数年振りのお茶会、楽しみです。

お茶会が終わると 16日が黄八丈セミナーです。
19日からはチャーミングセール。
gotoキャンペーンも 10月からは東京発着が使えるようになるみたいですし
そろそろ着物でのお出かけもしたいですよね。
少しずつ、気温も下がってはいますので どうぞお出掛けください。
じざいやはいつでも お待ちしております。

16日のセミナー 17時からの回にお二人分空きがございます。
黄八丈の魅力、その歴史と染織の詳細をお話くださいます。
今日のnoteにも 黄八丈の染について簡単に書きました。 こちら

黄八丈について もっと知りたくなりましたら
参加費無料ですので ご予約ください。

こんな材料を使って 美しい糸を染めているんです。 黄八丈の黄八丈たる、美しい黄色の小鮒草。 憧れの黒八丈は 椎の木の皮で下染して泥で染めます。 大島紬の泥染の色とは微妙に違います。 マダミ、とも呼ばれる タブノキで染めると 赤味のあるい美しい鳶色になります。
どれも一度で染まる色ではなく、糸を傷めないように 丁寧に何度も重ね染されて、
ようやく色付くのです。

note には 黄八丈のことの他、着物の蘊蓄やじざいやの想いを書いていますので
よろしければ こちら お読みください。

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今 じざいやにある山下芙美子さんの黄八丈は
黄八丈の3原色を巧みにつかって そこに無い色を感じさせるマジックのようです。
この色の不思議は 大事に丁寧に根気良く染める 八丈島ならではの染めがあってこそです。

動くごとに変化する綾織の不思議、糸の良さからくる、しなやかさを体感ください。  


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絽・紗・羅の違




夏物・・・透ける着物・帯の総称ですが とても種類が多いのが 夏物の特徴でもあります。

透けるから夏物なんだろうけど 一体これは何? いつ、どんなコーディネイトで着るの?

という お問い合わせを頂くことも多いですし 検索キーワードには 

「絽と羅の違い」なんて言葉が多く出てきますので 夏物について 書いてみます  

まず 大抵の呉服屋さんで夏の着物、と薦められるのが「絽」。

小紋~振袖、留袖などの正装にも使われる 夏の定番です。

三本、五本、または七本ごとの緯糸に経糸を絡め 隙間を作って織られたものです。

それぞれ、三本絽、五本絽、七本絽と呼ばれ 絽目(隙間)の幅が広くなっていきます。

経糸に緯糸を絡めた 経絽もあります。

また 糸に撚りをかけない平絽と 強い撚りをかけた駒絽があり 駒絽の方がシャリ感があり涼風に優れています。

絽に様々な模様を織り込んだ 紋絽もあります。​絽の帯。​ これも絽ですが 糸の太い絽つづれ、という八寸帯。

次いで「紗」

絡み織りの一種です。

経糸二本が一組になり そこに緯糸が織り込まれるごとに 経糸がよじれ、 隙間を作る織り方です。

絽よりも全体の透け感が強くなります。

いくつかの種類があり メーカーによって呼び方も違うことがありますが

粋紗(翠紗・すいしゃ)と呼ばれるものは 玉糸を使って紬風の風合いを持たせたものです。 (玉糸を使っていないものもある)

紋紗 は 地模様を織り出した紗です。

近頃見ませんが アンティークによくあるのが二重紗。

二重組織になっていて 裏と表が別の色で織られていたり、裏が縞や市松などの 柄になっていたりします。

着物のほか、コートにしたりします。

贅沢なお洒落着として 名前は耳にするけど なかなかお目に掛かれないのが 紗合わせ。

紗を2枚、もしくは 紗と絽を合わせて仕立てたもので

表に無地、裏に友禅柄などを描くことで 表地を通して裏の柄が透けて見えるもので 単衣の時期のきものとなります。  

「羅」もよく耳にすると思います。

正倉院の御物にもあるもので 古くから知られてはいたものの 

織り方が複雑すぎて 一時は技術が途絶えてしまっていたものを 昭和になって 北村武資氏が復元しました。

紗や絽より複雑な搦み組織で、 紗や絽は二本の経糸が一組になって緯糸を交差するのに対して、

羅は経糸すべてが次々と連続的な交差をし、ねじれて連なっています。

織る、より編むような感じ。

機も特殊なものです。

本物の羅は限られた高価なものですが

一般に羅の帯、羅のコートと呼ばれるものは 太めの糸で荒く織られた「荒紗」のことです。

夏の紬は 透け感のあるものを紗紬、夏紬と呼びますが撚りを掛けた糸や生紬を使って シャリ感を出したものの総称です。各産地の名のついた 夏大島、夏黄八、夏塩沢、夏牛首、夏結城・・・夏大島は奄美や鹿児島でも織られていますが夏黄八は 八丈島ではなく十日町で織られています。夏結城も 結城ではなく十日町で織られているものが多いですね(結城では 真綿と麻の交織の夏結城を見せてもらったことがあります)明石縮 も明石の名が付いていますが十日町産です。まぁ 産地はどこであれ 夏の季節に着る 透け感のある紬で 以前は盛夏(7,8月)のものでしたが近年は 透け感の少ない濃い色のものは 単衣の終わりや 秋単衣の最初の時期にもお召しになるのも ありになってきました。 だって 6月9月でも30度超えたら  普通の単衣なんか暑くて着られません~~~盛夏は麻ものしか着られないし^^;