成人式では もはや女性の制服的な振袖ですが。
うちの店では 振袖を扱っていないので よく判らないですが
レンタルが主流となっている中、
お母さま、時にはおばぁ様のお召になった振袖を
お召になる、いわゆるママ振り、も増えているようです。
売ることはあまりなくても お手入れやお直しのご依頼は受けますので
今年の成人式用にも 何件かのお手入れ&お直しを承りました。
お嬢様が20歳なら お母さまの振袖は20~40年前のものが
多いと思いますし 着用回数もそう多くはないでしょうから
寸法さえクリアすれば、ほぼ問題なくお召になれます。
昭和の終わりから平成のものなので
洋服と違って 時代で裾丈や衿幅が変わるものでもなく
業界人だと 色柄であぁあの頃のね・・・と分かっても
普通には 区別がつかないことでしょう。
実際のお母さまの振袖ではなくても リサイクルショップで
購入する方も増えているそうです。
一時のアンティーク、古着ブームはピークを過ぎたようですが
着物を気軽に手にする第一歩として
そして 着物を手に入れる選択の1つとして
リサイクル着物は定着したようです。
しかし 元々着物には古着がつきものでした。
着物はスカート丈や袖の形、衿の形などが
毎年どころか春と秋では流行が変るような洋服と違い
形は100年以上 ほとんど変わっていません。
とても長持ちのする衣服なのです。
江戸庶民は夏も冬も同じ着物を
夏は単衣で 冬には袷にしたり綿入れに仕立て直して着ていました。
絹が着られるのは豪商や武家だけで
一般庶民は 数枚の木綿を大切に仕立て直しては
ずぅっと着ていたのです。
継ぎを当てるのは当たり前のことで
色柄の全く異なる着物を繋ぎ合せることも普通にされていました。
今ではそれが端縫いとして 新鮮で面白いものに見えます。
当時は当たり前ですが 生地は全て手織りで
糸の生産も限られていましたら布そのものが貴重だったのです。
ですから 日常の衣服ではあっても
着物はとても大事に扱われ
汚さないための所作が身に付いていました。
新品を誂えるのはお金持ちのお内儀やお嬢様で
多くはお正月に古着の1枚も新調できれば上々とされました。
古着は江戸時代からの庶民の暮らしに欠かせないものだったのです。
でも 江戸時代と現代では ものの価値も違いますから
いくら形は同じでも
古いものをそのままお召になるのではなく
せめて寸法をご自分に合うものに仕立直して
ついでに八卦を替えれば
さらに自分らしい着物に生まれ変わります。
きちんと作られた着物の寿命は
着る人より長かったりします。
結城紬は三代もつ、と言われますが
それは糸も染も織も丁寧に作られているからなのです。
(量産品のプリント生地はまだ歴史が浅いので
いつまでもつかは 判りませんが・・・)
自分より年上の着物に出会ったら
敬意と優しさで接して上げてください。
そして 若い着物には愛情を一杯注いで
一枚の布が着物になって成長していくのを
手助けしてあげてください。
しかし、布そのものより 縫い糸の方が先に弱ることも多いですし
帯は捩じったり折り畳んだりで
着物より布をいじめるので寿命も短いです。
メンテナンスは必須ですので
時々傷みのチェックをしてあげてください。
三代もつ・・・本場結城紬。
新品より 少し着こなれた方が風合いが良いとさえ言われます。
というのは 本場結城紬は 本場結城紬独特の小麦粉糊を使い
手引きの糸の毛羽を抑えるために 糊を残して地入れするため
最初は布が硬いのです。
最近は糊をあまり残さずに
最初から着心地の良い風合いに仕上げることが多くなっていますが。
だって、お金を出して自分のものにした人が一番いい着心地で着たいですよね。
昔のように毎日着るわけではないので
悠長に布を育てるよりも 初めて袖を通した時に感動してもらいたいと思いますし。
で。育ちあがった?本場結城紬です。
最近のお仕立てなので 程よく糊を落として柔らかく軽い仕上がりで
数回の着用後 きちんと洗ってあります。
反物は ちょっと前の糸の良い時代の100亀甲総絣。
今はこれだけのもの、絣を括るだけでも半年から掛かります。
織元でも年に1,2反織るかどうか、の逸品です。
黒・・・ではなく濃紺です。雲取りに赤いのは菊や牡丹の花。
本場結城紬らしい、と言えます。
古典的な絣には 今風の帯を合わせて。
吉田美保子さんの アポロンレッドをコーディネートしました。
ここで昭和の朱色の帯をもってきてしまうと 大惨事になりかねないので
(昭和レトロを狙ってるのでしたら良いのですが)
この、ピンクの入った帯が良い仕事をしてくれます。
仕立上がりの本場結城紬、
急に寒くなった今が旬。着頃です。
仕立て上がり本場結城紬
身丈 背から4尺1寸
裄 1尺7寸5
前幅 7寸2
後幅 8寸2
繰越 6分
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